企業選びの軸は「やりたいこと」だけではない

下記記事に関連してツイッターで呟いたところ反響がありましたので、こちらにまとめ直します。

Rayの取材を受けたときにも感じたことだが、そしてこれはいつの時代もそうなのだが、就活難の原因に、「好きを仕事に」願望(幻想)があることを最近、強く感じている。500人模擬面接をして再確認したのだが、「やりたいこと」と「むいていること」が大きくズレている人多数。そして、「アナタ、そこじゃないでしょ?」という企業選択をしてしまう…。うーん。


私も採用面接官をやっているので、よく同じことを感じます。
社会人になれば大抵の人は実感すると思うのですが、自分のやりたいことだけ仕事にできるなんてほぼありえません。まして新入社員ならなおさらです。
しかしそういった事実を知らずに、あるいはその事実に目を向けないまま企業を選び就職してしまう学生さんは必ずいます。
このような就職は

  1. 「好き」とか「面白そう」だけで仕事を選んだ
  2. イメージと違った、やりたい仕事ではなかった、評価してもらえない
  3. 早期退職


というパターンに陥りやすく、これでは人材にとっても企業にとってもメリットがありません。

好きを仕事にするには覚悟が必要なのだ。
好きかどうかよりも、むいてそうかどうか、活躍できそうかどうかが採用時にも入った後でも大事なんだな。
好きが長く続くとは限らないし。


好きなこととむいていることが合致している人はラッキーだけどね。ちなみに、成功者は意外にもやらなければならなかったことを通じて、自分がむいていることに気付き、それがやりたいことに変わっているという傾向があるかも。

そう、だから「まずは与えられた環境のなかで成果を出す」「与えられた仕事を好きになる」といった覚悟と、「むいているか=強みを活かせるか」という観点が必要になるのです。



ただ、同記事でも指摘されているとおり、その仕事に強みを活かせるかを判断するのは簡単なことではありません。
したがって、OB訪問等を通じて企業研究を深めていくことが大切ではあるのですが、もう少し企業選択の軸を延ばしたり広げたりすることもできるのではないでしょうか。


例えば、「その仕事を通じて何を実現したいのか」というビジョン(夢)があれば、もはや職種や仕事内容は大きな問題ではなくなります。
自分の仕事が何であれ、それに自分で意味付けできるようになるので、モチベーションや成果も自然とついてくるのです。
またビジョンの内容についても、「自分のため(自己実現)」ではなく「他人のため(社会貢献)」のものであったほうがよいと考えます。
「他人のため」に目指すものならば、仮に ”自分のためにはまったくならない仕事” が任されても意味付けできるからです。(実際にはそんな仕事もないと思いますが)


さらに、「何をやるか」ではなく「誰とやるか」という軸も存在します。
「こういう価値観・能力をもった人たちと働きたい」「この人たちに貢献したい」といった動機があれば、仕事どころか事業内容が変わったとしても、その企業に属する意義は変わりません。
ただし、その企業で働く人たちが共有しているビジョンに共感し、一緒に目指していけることが前提となります。
また、人という軸で見極めるためには、その企業の価値観を深く理解するとともに、その価値観の浸透度(企業文化や採用方針に顕れてくるはず)を研究する必要があります。実態がともなっていないところに共感しても意味がありませんからね。



私自身、自分のビジョンや「誰とやるか」という軸にもとづいて今の会社を選び(したがって職種への強いこだわりもありませんでした)、今までやってきたこととはまったく関係のないプログラマという職種に就いています。
しかし、仕事が嫌だとかつまらないとか感じたことは一度もありません。
今回挙げてきた軸に誰もが共感できるということはないかもしれませんが、就職活動のひとつの在りかたとして参考にして頂ければなぁと思っています。